【疾患】 糖尿病

● 現代医学からみた糖尿病

1.糖尿病の特徴

2.糖尿病の分類

一型糖尿病と二型糖尿病の比較
 一型糖尿病二型糖尿病
頻度まれ多い
発症急性慢性
発症年齢若年成人
体型正常ないし痩せ型肥満型が多い
血糖高い軽度
インシュリン必要不必要
病態不安定安定
血管合併症多い、進行急軽度で、進行遅い

3.糖尿病の合併症

● 漢方からみた糖尿病

糖尿病は漢方では消渇といっている。勿論、現代医学の顕性糖尿病のことである。
血糖値が130以上で、尿糖が出ており、はっきりした糖尿病のことである。前糖尿病の段階のものは一応除いて、上にあげた糖尿病を対象として述べることにする。
前糖尿病の予備軍は、漢方では、糖尿病という概念を離れてそのときの症候をもとに弁証して、治療を進めていかなければならない。
漢方でいう消渇と、現代医学の糖尿病とは大体同じものと考えてよい。本病は、飲食の不節制、精神的ストレス、過度の労働、肥満、先天的体質などが発生の主な原因であり、漢方では陰津虚損、燥熱内生を病因と考えられている。

・陰津虚損、燥熱内生
健康人では、人の陰陽は平衡を保っている。
陽が多いつまり陽盛になると熱、陽が少ないつまり陽虚になると寒を生じる。陰が多いつまり陰盛になると寒、陰が少ないつまり陰虚になると熱を生じる。
陰津虚損とは、陰が虚損して体内の水分が失われ、乾燥して体内に乾いた熱を生じることである。

1.病因

糖尿病は、陰津虚損して燥熱が生じそれが高ぶって起こるもので、根本原因は陰虚であり、表面に現れた症状が燥熱である。
両者は互いに影響しあっており、陰の虚が進むと燥熱はますます盛んになり、燥熱が盛んになると陰はますます虚してくる。

・先天的体質と腎と精の関係
まず、漢方でいう腎とは現代医学の腎臓だけを指すのではなくて、もっと広い意味をもっている。漢方でいう腎は、現代医学でいう小便の排出などの泌尿系統、生殖、内分泌、脳の働きの一部、精の成長、発育、などの幅広い働きをしている。
精とは、父母の生殖の結合によって生まれた先天の精と、生後摂った食物の営養物質が変化してできた後天の精を一緒にしたもので、これらの強弱は生まれた後の成長発育を左右し、その人特有のものをもっている。
精は腎自体の精気で、「腎は精を蔵す」といわれているように、腎に貯えられ、生長発育にたずさわり、生殖機能の本になるものである。飲食物から吸収された営養物質は、脾の運化によって全身に転輸され、各組織に供与される。その中でまだ直接利用されない精微物質は腎に貯蔵され、必要に応じて随時各組織器官に供給される。
生命が生まれる最初の活動の基になる先天の精のよしあしは、生まれて後からの後天の精を作る条件になる。つまり先天の精の力が充実していないと、生まれた後の後天の精の充実はあり得ない。
要するに、先天の精は生まれた後からの人体の基になるものである。これを先天的体質といっている。
先天的体質は、腎に蓄えられた腎精の強弱によって決まる。先天的体質は、先天の精と後天の精との和の強弱によって決まる。 その人が生まれつき強いか弱いかは、腎に蓄えられた精の強弱によって決まる。
現代風にいえば、その人の遺伝子の配列、善し悪し、によって、先天的体質がどういうものかが決定される。

2.診断

3.弁証

本証
弁証の区別主な鑑別症状
燥熱いらいらして口渇、多飲、口舌乾燥、尿頻量多い、尿色黄、消痩、舌赤苔少、脈力強く早い
胃熱多食、口渇冷飲、消痩、大便乾燥、舌赤、脈力強く早い
陰虚尿頻量多い、混濁、甘い、腰膝痛だるい、耳鳴り、多夢、遺精、皮膚乾燥、皮膚痒い、舌赤少苔、脈細く速い
陰陽両虚小便頻、混濁、よく飲んでよく小便する、咽舌乾燥、手足ほてる、すがた憔悴、顔色黒ずむ、腰膝痛だるい、四肢冷える、寒がり、舌淡苔白で乾、脈沈細無力
合併症
疾患病因主な鑑別症状
淤血動脈障害長期の糖尿病、淤血阻滞、舌質淤暗、舌上淤点班、舌下静脈怒脹、頭痛、耳鳴り、胸部刺痛、半身不随、動悸、健忘、多夢、脈渋か結代
白内障網膜障害
細動脈
糖尿病の長期化、視力減退、黒いものが飛ぶ、瞳白、油状の黒点が見える、失明するに至る
できもの皮膚障害糖尿病に併発、皮膚のできもの、なかなか治らない、歯ぐき化膿、舌赤苔黄、脈早い

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