婦人科全般にわたって、その病因、病理、病位、病性を四診で得られた特徴に従って総合的に判断、推理、分析することにする。
婦女の月経の正常異常は、健康のバロメーターである。故に月経の異常は直接、間接的に全体の健康に影響を与える。
婦人科疾患の発生原因は、主に外感と内傷に分けられ、外感では寒、熱、湿、内傷では精神的因素、多産や房労などによるものが多い。種々の因素は、気血、臓腑、衝任の脈の正常な生理機能に影響を与えて、色々な婦人科の疾患を起こす。
外感 | 寒邪が外襲すると血は寒によって凝まり、血の循環が緩慢になり、月経は遅れ、月経量は少なく、月経痛や閉経などの病となる。 熱によって火と化すと、血液妄行し、血の循環が速くなり、月経の周期は早まり、月経過多、逆経、崩漏、産後発熱などが起こる。 湿性は重濁で、経脈を阻滞し、気の流れが失調し、血行が阻まれて、月経不順、帯下などが起こる。 |
内傷 | 精神状態は、婦人科疾患の発生や発展に多大の影響を与える。精神情緒の反復刺激は、肝、心、脾の機能失調をひき起こし、いずれも衝任二脈の働きに影響し、月経不順、閉経、逆経などの病を起こす。 また多産や房労過多によって気血を傷耗し衝任二脈を損傷しても、月経痛、帯下病、流産、早産などの原因となる。 |
気血 | 気血の失調は婦人科疾患で常見される発病因素である。月経、妊娠、分娩、授乳はいずれも血の作用によって行われ、皆血を消耗し易い。したがって常に血分不足になり、相対的に気の有余の気血失調状態をひき起こす。それ故、婦人科疾患では血虚が主である。 もともと血が本であるが、気は血の帥であり、血は気の指図によって支配されており、気は陽、血は陰、気は動、血は静、血の生成は気に頼っており、気の循環が血行を左右する。 血の昇降、寒熱、虚実はみな気に従っている。それ故、婦女の病はみな血が原因とはいっても、大部分は気病が血に及んだものである。つまり「血病は気による」ということになる。 臨床でよく見られる気血失調は、血虚火旺に属するものが多い。 |
臓腑 | 脾は精微の運化を主り、心肺に上輸して営血に化生し、全身を滋養している。そして余ったものは肝に貯蔵し、婦女にあっては衝任二脈に蓄え充溢させて、月経、妊娠、授乳に備えている。 衝脈、任脈の循行部位からみると、衝脈は「気街から起こって」、足の陽明経より出、足の少陽経と併行し、気血を涵養している。足の陽明は胃に属し、水谷の海であり、資性の源である。足の少陰は腎に属し、先天の本であり、精を蔵し子宮の機能と密接な関係をもっているので、衝脈に多大の影響を与える。任脈は小腹から出て、気血の脾、肝、腎の三陰経に合流し、それによって子宮を内養しており、「婦人の生養の本」となっている。 婦人科の疾患は衝任の脈の損傷がみられるが、治療に際しては多くは臓腑機能の調整が主である。 |
衝任 | 「衝は血海である」(衝脈は十二経脈の聚る処。血海は通常衝脈を指す。その脈は子宮から起こり、気血の作用を調節し、月経の来潮と密接に関係している) 「任は子宮を主る」(任脈は月経の来潮や妊娠の能力を主っている。任は姙に通ずる)
衝脈は血を化して月経の源泉となり、任脈は妊娠の重要な働きをなしている。 |
婦人科でも勿論のこと、四診による症候の掌握によって判断、分析することが大切である。ここでは、寒、熱、虚、実の四つに分けて説明する。しかし、これら四つは互いに孤立しているものではなくて、相互に交ざり合い重なり合っている場合が多い。
実寒 | 小腹拘急冷痛、痛んで拒按、温めると痛み減じ、身体四肢冷、大便泄瀉、月経後期(月経の周期が大体一週間以上遅れてくるもの)、月経困難、経色暗黒、質粘、血塊が混じる、閉経、白帯量多、流産、不妊、顔色青白、舌淡紅、苔白厚。 寒邪壅盛して、陽気が抑え込まれたもの。 |
虚寒 | 小腹墜脹隠痛、喜按喜温、腰酸畏冷、口味なく食欲減、大便溏薄、小便清長、月経後期、月経量少、経色淡紅あるいは紫黒、質稀薄、月経痛あるいは閉経、白帯白、口唇色淡、舌淡紅、苔白潤。 陽気虚衰して、陰寒が内盛したもの。 |
実熱 | 煩躁口渇、発熱汗出、胃腹部痞満、疼痛拒按、大便乾燥、小便黄赤、月経先期(月経の周期が正常より大体一週間位早いもの)、月経量多あるいは急な崩漏、質粘、血塊が混じる、経色紫紅、逆経(月経期間中または月経前の吐血や衄血)、帯下黄色、質粘、顔紅目赤、舌紅、苔黄燥。 熱邪熾盛して、衝任が損傷したもの。 |
虚熱 | 頭暈目眩、潮熱あるいは内熱、盗汗、消痩無力、咽乾口燥、少寝多夢、月経先期、月経量少あるいはダラダラといつまでも続く、経色鮮紅、質清稀、血塊なし、逆経、帯下は血液が混じり、更年期障害、顔色潮紅、舌紅、苔少あるいは無苔。 火旺陰損によって、熱が衝任を乱す。 |
気虚 | 全身疲乏無力、ものうく、息切れ、精神不振、動悸多汗、少腹下墜、大便溏薄、月経いつまでも続く、崩漏、色淡、質稀、白帯多く稀薄、流産を起こし易い、子宮下垂、顔色白っぽい、舌唇淡紅、苔白潤。 脾腎気虚により、衝任が受損され、固摂できなくなったもの。 |
血虚 | 頭暈目眩、動悸、皮膚乾燥、消痩、手足麻木、大便乾燥、月経後期、経色淡紅、質稀、月経量次第に減少、甚しい時は閉経、月経後腹痛続き喜按、乳汁不足、顔色くすんだ黄色か淡白、舌唇淡紅、苔薄あるいは無苔。 営血虚損減少により血海が充満されず、衝任が滋養を失したもの。 |
陽虚 | 精神疲乏、身寒肢冷、自汗、下痢、小便清長、月経周期大幅遅延、月経量少、色淡、質薄、帯下清稀量多、不妊または流産、顔色灰白、舌質淡嫩、苔薄白。 陽虚生寒により、衝任を温煦することができなくなったもの。 |
陰虚 | 頭暈耳鳴、午後潮熱、口乾、盗汗、煩熱、身体痩弱、動悸多夢、腰膝酸軟、大便乾燥、月経周期大幅先期、月経量多く崩漏、あるいは量少で閉経、帯下血液混じる、顔頬轟熱、頬赤、舌質紅絳あるいは舌光無苔。 陰虚生熱により、衝任を滋養できなくなったもの。 |
気鬱 | 精神抑鬱、頭暈目眩、胸腹脹痛、月経不定期、経色紫紅、月経困難、小腹脹して痛、経前乳脹、妊娠産後腹痛、乳汁不通、舌苔白薄あるいは微黄。 肝が疏泄を失して、気が鬱滞したもの。 |
血淤 | 胸腹刺痛、口乾しても水分は欲しくない、大便乾結、月経後期、経色紫黒、血塊が混じる、塊が下ると痛減、月経困難、小腹硬痛拒按、月経痛、閉経、顔色暗紫あるいは目のふちのくま、舌質紫あるいは淤点。 淤血の内阻により、血液の運行が不利となったもの。 |
痰湿 | 頭重くしめつけられるよう、身体困重、胃腹部脹満、食少、悪心、口淡(味がしない)粘膩、大便溏薄、月経遅延、量少色痰、閉経、白帯量多、つわり重い、あるいは不妊、顔目浮腫、舌苔白膩。 痰湿が壅滞して、気血の流れが失調したもの。 |
月経とは毎月1回子宮からの出血の現象をいう。卵巣や子宮などの周期的変化が月経をもたらすものであり、これを月経周期といっている。
女子の臓腑経脈の生理機能が次第に発育成熟すると月経が始まる。初潮は一般に12歳〜18歳の間であり、大多数は12歳〜15歳である。月経の間隔(周期)は通常28日〜30日で、その出血期間は3日〜5日であり、出血の量は2日〜3日が最も多く、その総量は50〜100mlである。
排出された経血中には粘液、内膜組織、脱落した膣上皮などが混じっている。内膜組織には抗凝物質が含まれているので、経血は一般に凝固しない。正常なものは無味無臭である。妊娠するとこのような毎月1回の周期に変化が生じて、すぐ月経は止まってしまう。
漢方医学では、月経の来潮は腎気(命門より生ずる)や衝、任脈の作用によるものと考えられている。
腎は精を蔵し、人体の成長発育を主っている。女子が7歳前後になると、腎気は次第に旺盛になり、身体の著しい変化が起こり、歯も生え換わり、髪もフサフサとのびてくる。14歳前後になると、腎気はますます充盛し、「天癸<テンキ>」(月経)が始まる。これは性腺刺激ホルモンの分泌によるものである。
このようなとき生殖機能はようやく成熟し、衝脈、任脈もその作用を発揮しはじめる。任脈は気を通じ、衝脈は血を盛んにし、子宮に達し血海は満ち溢れて月経となる。49歳前後になると腎気も衝任二脈も次第に衰え、内分泌腺ホルモンの機能も次第に弱くなり、いわゆる「天癸竭」、月経は止まってしまう。
月経は主に腎気と衝任二脈によるものとはいっても、これらと五臓とはまた密接な関係をもっている。血の生成、運行循環は気の生化と調節に頼っており、気はまた血の営養に依存している。
五臓で、心は血を主り、肝は血を蔵し、脾は血を統べ、肺気も血の正常運行に参与している。五臓の機能が正常であれば、血液は通暢し、血海の満ち欠けも充分に行われ、月経も決まった時期に来潮する。
つまり漢方では、月経の来潮は、臓腑経絡気血の作用の如何にかかっている。月経時には、ある程度の軽い小腹及び腰、背の張りや痛み、頭重痛、乳房脹、全身倦怠、食欲減少、情緒不安などが現れるが、月経が終わると自然に消失する。
月経先期
月経が正常の周期より早く来るものを「先期」という。この場合、1ヶ月中に2〜3回、あるいは10日〜半月も早く来るのは先期の中には入らない。
先期は婦女の生まれつきの体質や年齢と関係がある。身体が壮健で若年のものは、経時の腹痛、経量が多く、経色深紅で、多くは血熱あるいは鬱熱に属する。年をとっていて身体が比較的虚弱で、経後腹痛、経量少なく、経色淡紅のものは、多くは気虚に属する。
月経先期は主に四つの型に分けられる。
病因病機 |
生まれつき内熱 あるいは ┐ 陰虚陽亢 ├→ 血熱 → 血液妄行 → 月経先期 │ 辛辣なものの過食 ┘ |
主症 | 月経先期、量多、色濃、質粘、血塊混、心煩胸悶、喜冷悪熱、舌質紅、苔薄黄。 |
証候分析 | 血が熱をもつと妄行し量が多くなり、血が熱に灼傷されると色が黒っぽくなる。熱が脈絡を損傷すると、心肝に影響を与え、心胸煩悶する。血の実熱であるので喜冷悪熱する。舌紅苔黄は裏実熱に属する。 |
病因病機 |
抑鬱 ┌→ 肝脈と衝脈はつながっている 暴怒 ┐ │ 衝脈は月経を主るので 心情不快 ├→ 傷肝−肝気鬱結 ┤ 肝鬱になれば月経不調 │ │ をひき起こす 精神抑鬱 ┘ └→ 鬱が長びけば熱と化す 精神刺激 ↓ 血熱妄行して衝任損傷 ↓ 月経先期 |
主症 | 脇脹痛、胸悶、心煩、飲食不消化、精神抑鬱、時に潮熱、舌質紅、苔薄黄、月経紅 or 紫、量多 or 少、淤塊。 |
証候分析 | 肝鬱して熱と化せば、気の流れが悪くなり、月経先期、排泄不爽になって淤塊が混じり、色は紅 or 紫となる。肝経に気滞すれば両脇脹痛する。肝気不舒では煩躁易怒する。 |
病因病機 |
大病、久病 ↓(営養失調) 中気虚弱 ↓ ┌→ 気が摂血しなくなる ───────┐ 脾気虚 ┤ ├→ 月経先期 ↑ └→ 脾が統血しなくなる → 衝任損傷 ┘ 思が脾を傷る ↑(精神刺激) 思慮過度 |
主症 | 倦怠無力、食欲減少、息切れ、動悸、月経色淡で稀薄、量多、舌質淡、苔白。 |
証候分析 | 倦怠無力、息切れは虚に属する。食欲減少は脾虚。動悸、舌淡は血虚の証。気は血を生じ、血は気を化し、気血互いに助け合って作業を営んでいる。したがって気虚になると血に影響して血虚となる。月経量が多いのは血が統摂を失い、衝任が損傷したためである。 |
病因病機 | 腎陰虚 → 陰虚内熱 → 月経先期 |
主症 | 頭眩、五心煩熱(手足の内側がほてり、胸中煩熱を伴うもの。陰虚内熱のとき現れる)、腰酸、微熱、不眠、舌紅少津、月経先期、色紅、塊なし。 |
証候分析 | 腎陰不足では内熱になり易いので、微熱が生ずる。頬紅は陰虚熱症である。睡眠中陽光が寄り付く所がなくなり、汗が外越し盗汗となる。腰は腎の府であり、腎虚になると腰酸する。腎陰不足すると清窮を養えなくなって耳鳴りする。 |
月経後期
月経周期が40日以上、ひどい場合は2〜3ヶ月もないものを「後期」という。
後期は主に六つの型に分けられる。一番多いのは血寒型で、血虚型がこれに次ぐ。
病因病機 |
過食生冷 → 寒邪 → 衝任二脈に侵入 → 血が寒凝する → 経脈運行不暢 → 月経後期 外感寒涼 |
主症 | 月経後期、量少、色暗紅、小腹絞痛、拒按、温めると軽減、四肢冷、畏 寒身痛、頭暈、胃部悶、舌質正常、苔薄白。 |
証候分析 | 血が寒邪によって凝滞し、運行不利となるので、月経後期、量少、色暗 紅である。寒邪が裏にあるので喜熱、四肢冷、顔面蒼白、畏寒、苔薄白となる。 |
病因病機 |
体質生まれつき弱 陽気生まれつき虚 → 陽虚気を化す能わず → 血の生成減緩 → 衝任血虚 陽虚陰寒内盛 ↓ 血海の満ち欠けできず ↓ 月経後期 |
主症 | 血色淡、量少、腹痛続く、喜按喜暖、頭暈、顔面蒼白、腰酸無力、苔薄白。 |
証候分析 | 陽虚になると頭暈、顔面蒼白、血色淡、量少、綿々腹痛、喜按喜暖。これらはいずれも虚寒のためである。腰は腎の府であり、腎虚になると腰酸無力、苔薄白、これらは血虚のためである。 |
病因病機 |
久病 → 営血損耗 → 衝任血虚 → 月経後期 失血 血海不足 |
主症 | 月経後期、量少色淡、小腹痛、身体痩弱、顔くすんだ黄色、皮膚に潤いがない、眼がかすむ、動悸、舌淡無苔。 |
証候分析 | 血海の満ち欠けが時間通りに来ないため、月経後期となる。量少色淡は子宮が営養を失したためである。血が不足すると内は血管を充実させ、外は皮膚を潤すことができず、身体痩弱、顔はくすんだ黄色、皮膚に潤いがなくなる。 |
病因病機 |
憂、思、怒 → 傷気 → 気機鬱阻 → 血滞 → 月経後期 (精神刺激) |
主症 | 月経後期、色正常 or 黒っぽい、血塊、量少、小腹脹痛、精神鬱悶、胸痞、噫気後楽、乳脹、脇痛、舌苔正常 or 薄黄苔。 |
証候分析 | 気血鬱滞すると小腹脹痛、精神鬱悶、胸痞。単なる気鬱では舌苔正常、鬱が長期化し熱と化せば舌苔薄黄。 |
病因病機 |
体内物質代謝緩慢 卵巣機能紊乱 → 痰多湿盛 → 痰湿経脈を塞ぐ → 気血運行不利 → 月経後期 体質肥満 |
主症 | 月経後期、色痰で粘、白帯多く白粘、身体肥満、顔色白、胃部脹、食少痰多、精神疲倦、動悸、息切れ。 |
証候分析 | 痰湿が経脈を阻塞し、気血の運行が不利となるので、経血粘で淡、白帯多く粘。痰湿が脾胃に聚るので、食少痰多。痰湿が心を犯すので、動悸、息切れする。舌苔膩は内に痰湿が停滞した象である。 |
月経不定期(早くなったり、遅くなったり)
月経不定期は肝腎と密接な関係がある。その中でも肝気不調、気機逆乱が主である。肝は血海を司り疏泄を主っているので、太過不及になると、いずれも血海は蓄溢の異常を生じ、月経の経期は乱れてしまう。
病因病機 |
憂、思、怒 → 肝鬱 → 肝は血海を司る → 月経不定期 (精神刺激) |
主症 | 月経量多かったり少なかったり、血塊なし、色質正常、小腹脹痛、脇痛、乳房脹、胸悶、ためいき、精神抑鬱、舌苔正常。 |
証候分析 | 鬱怒は肝を傷り、気血乱れて血海も安泰でなくなり、経期も乱れてくる。肝鬱すると気滞血淤を生じ易いので、胸悶、乳房、小腹、胸脇、脹痛となる。 |
病因病機 |
体虚 → 腎気不足(腎が閉蔵を失する)┬→ 血塊蓄溢異常 → 月経不定期 情欲無節制 → 傷任受損 ──────┘ |
主症 | 月経量少、色淡質稀、小腹墜痛、腰酸、夜間多尿、大便不実、舌淡苔白。 |
証候分析 | 腎は水火の臓であり、精気を蔵し、天癸を化生する。腎気虚で水火共に損傷を受け、水が不足すると経血の量は少なくなり、火が不足すると経色は淡く薄くなる。腎虚は陽気不振であるので顔色は暗く黒ずむ。腎は骨を主り髄を生じ、脳は髄海であるので、腎虚で髄海不足となると、孔(あな)が塞がって耳鳴りや頭暈が起こる。腰は腎の府、子宮は腎と関係があり、腎虚では腰酸、小腹墜痛する。腎虚では二便を制約できなく、尿多、大便不実となる。 |
閉経
一般的に女子は14歳前後で月経がくるものであるが、18歳を過ぎても来潮がなく、あるいは毎月定期的にきていて突然3ヶ月以上も停止するものを「閉経」という。
閉経は、過去に月経不調があって、往々にして月経過少、後期、不定期の後に現れる。そして常に腹脹、腹痛、腰痛、肢軟、精神抑鬱などの症状を伴う。閉経の原因は色々あるが、臨床では虚が多く実は少ない。
現代医学では、全身性疾患によって起こるもの、子宮性のもの、卵巣性のもの、脳下垂体に関係したもの、下丘脳に関係したものに分けられる。
基礎体温は、子宮性のものは低温と高温の二層に分かれた型であるが、卵巣性、脳下垂体性のものは低温高温の区別がなく一層の型(無排卵)である。
漢方では次の七種に分けられる。
心火偏旺型 | 閉経、心煩不眠、大便秘結、小便熱赤、舌光紅 or 舌質絳、苔薄 or 少苔 |
痰湿阻滞型 | 肥満多痰、月経閉止、動悸乏力、月経少か無、多くは不妊 |
寒湿凝滞型 | 閉経数ヶ月、下腹冷痛、四肢不温、寒がり、胃部悶、吐き気、大便不実、白帯多、質稀薄 |
気滞血淤型 | 月経閉止、精神抑鬱、煩躁多怒、両脇脹満痛、乳房脹痛、下腹脹痛拒按、舌質多くは紫 or 淤斑あり |
肝腎陰虚型 | 閉経、頬赤、頭暈、耳鳴、夕方潮熱、五心煩熱、盗汗、煩躁不安、腰背酸痛、食欲不振、疲労、舌紅少苔 |
脾腎陽虚型 | 長期閉経、顔色白、顔足浮腫、動悸、息切れ、汗出、四肢沈重、手足不温、畏寒喜暖、腰膝酸軟、食少便溏、消痩、舌淡、苔薄白 |
気血両虚型 | 月経量少、色淡、次第に閉停、顔色くすんだ黄色、疲労倦怠、動悸、息切れ、四肢不温、頭暈、食欲不振、腹脹、軟便、脱毛、乳房性器萎縮、舌淡胖嫩、苔白膩 |
月経痛
婦女が月経前後 or 経期中に下腹部や腰部の痛みを生じ、これが日常の生活や仕事に差し支えるようなものを月経痛という。ひどい場合は頭痛、悪心、嘔吐、腹瀉などの症状を伴うことがある。
月経痛は婦人科でよく見られる疾患の一つで、一般に次の二つに分けることができる。
原発性月経痛(機能性)
原発性月経痛は未婚の子女に多く見られ、大多数のものは初潮の後発生するが、結婚して発育すると自然に軽くなったり消失したりする。
原発性月経痛は生殖器に局部的器質性の病変がなく、たとえば子宮発育不全や精神的原因によってひき起こされるものである。
継発性月経痛(器質性)
継発性月経痛は既婚婦女に多く見られる。過去に月経痛がなく、多くは月経来潮後数年たってから、子宮筋腫などの生殖器官の器質性病変の発生によってひき起こされる。
月経痛では、その痛みの時間、部位、性質と全身の症状とを考えあわせて寒、熱、虚、実を分けなければならない。
月経前、経行時痛む | 実 |
月経後痛みが続く or 経後痛み始める | 虚 |
喜按 | 虚 |
拒按 | 実 |
温めると痛みが軽くなる | 寒 |
温めると痛みがひどくなる | 熱 |
腹痛かつ脹する | 気滞 |
腹痛し、淤下れば軽くなる | 血淤 |
脹が痛よりひどい | 気滞 |
痛が脹よりひどい | 血淤 |
刺痛 | 熱 or 血淤 |
絞痛、冷痛 | 寒 |
いつまでも痛みが続く | 虚 |
灼痛 | 熱 |
両側少腹痛 | 肝 |
痛みが腰部に連なる | 腎 |
月経痛の理論根拠は「通ぜざれば痛む」であり、主に気血の運行がスムーズに流れないことによる。気は血の帥なり。血は気に随って行る。気行れば血行る。通ずれば痛まず。
月経痛の病因及び症状は次の五つの型に分けられる。
気滞血淤型 | 月経前1〜2日 or 月経期少腹脹痛、拒按、胸脇 or 乳房脹痛、経量少、経行不暢、経色暗 or 淤塊あり、淤塊下れば痛み減、舌紫暗 or 淤点、苔白潤。 |
寒凝胞中型 |
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湿熱下注型 | 経前小腹疼痛、拒按、灼熱感、 or 腰部脹痛、 or 日常時々小腹痛、経来ると痛みひどくなる、時々微熱が出る、経色暗紅、質粘、淤塊あり、帯下黄粘、小便短黄、舌紅苔黄膩。 |
気血虚弱型 | 経後1〜2日 or 経期中小腹重痛、小腹及び陰部が下にさがる、喜按、経量少、経色淡質薄、倦怠乏力、顔色悪い、納少便溏、舌淡苔薄。 |
肝腎虚損型 | 経後1〜2日 or 経期中小腹痛が続く、腰部酸脹、経色暗淡、量少、質稀薄 or 潮熱 or 耳鳴、苔薄白 or 薄黄。 |
婦女の膣内には常に白色または淡黄色で無味無臭の薄く粘っこい分泌物がある。これを「帯下」または「白帯」といっている。これは膣壁の粘膜を潤し、一般に月経前後や排卵期や妊娠期には比較的多くなるが、ほかに不都合な症状がなければ生理的な帯下であり病ではない。
もし帯下が異常に多かったり、色がついていたり、濃い粘液であったり、水のように薄かったり、臭いがあったり、また掻痒や灼熱痛などの局部的刺激症状や、更に腰腿酸軟、小腹脹痛などを伴う病的状態の時は「帯下病」と見なす。帯下病は生殖器官によく見られる疾患であり、たとえば膣炎、子宮頚炎、子宮頚ガン、子宮筋腫などは、いずれもそれぞれ違った型の病理的帯下ということができる。
帯下病の原因は大きく分けて内因、外因の二種がある。
内因では脾気虚弱、腎気不足、肝経火鬱などによるものが多い。
外因は湿熱、湿毒によってひき起こされる。たとえば飲食の不節制、栄養分の多いものの過食などによって脾気を損傷したもの、房室で傷ついたり、手術の際に創傷し、任、帯二脈が影響を受けて固摂できなくなったもの、あるいは経行や産後に虚し、更に洗浄用具の不潔などの原因によって、湿毒の邪が侵入したものがある。
主症 | 帯下色白質薄無臭味、顔色白 or くすんだ黄、四肢不温、精神疲労乏力、納少、小腹墜脹、大便溏薄、足浮腫、舌質淡苔白膩。 |
証候分析 | 症は脾気虚弱に属し、水谷を化し精血を生ずることができず、水湿の気が下陥して帯下となったものである。脾虚し中陽が不振になれば顔色は白っぽいかくすんだ黄、四肢不温が現れる。脾虚では湿を化すことができず、運化機能が失調するので、大便は溏薄、足は浮腫を生ずる。舌淡は脾陽不振の候である。 |
主症 | 帯下量多、色黄 or 赤白混じる、陰部掻痒、ひどい場合は灼熱感、心煩易怒、口乾内熱、耳鳴、動悸、不眠、汗出、腰痛、舌紅少苔。 |
証候分析 | 腎虚では、帯脈は約束を失調し任脈は固摂できなくなるので、帯下の量は多くなる。陰虚になると内熱を生じるので、口乾内熱、帯下色黄あるいは赤白が混じり、陰部掻痒、灼熱感が見られる。陰虚陽亢では心煩易怒、頭暈、耳鳴、動悸、汗出の症が見られる。 |
主症 | 白帯量多、質稀薄、一日中流れて止まず、腰酸、小腹冷感、小便頻清長、夜間多い、舌質淡、苔薄白。 |
証候分析 | 腎陽不足では陽虚内寒し、帯脈は約束を失調し、任脈は固摂せず、精液は滑脱して下り、薄い稀薄な帯下となる。命門の火が衰え下の膀胱を温めることができないので、小便は清長になる。腰は腎の府であるので、腎陽不足では腰酸する。腎陽虚では子宮を温煦することができず、小腹は冷感を覚える。 |
主症 | 帯下色赤 or 赤白混じり or 黄緑、質粘臭、流れ出て止まず、月経不定期、精神抑鬱易怒、胸脇脹満、口苦咽乾、舌質紅苔黄。 |
証候分析 | 肝気鬱結し火と化し、肝火が内熾し、任、帯二脈に下注するので、色は赤紫 or 赤白混じり、質は粘で臭いがする。 肝気鬱結では精神抑鬱の症が見られ、胸脇脹満する。口苦咽乾、舌質紅苔黄は肝火の象である。 |
主症 | 帯下量多、色黄緑で膿のようで、質粘、濁って米のとぎ汁のようで泡状を呈し、くさい臭い、陰部掻痒、小腹痛、小便短赤、口苦咽乾、微熱、舌質紅苔黄。 |
証候分析 | 湿毒が内侵し任、帯二脈を損傷するので、汚い液が下の方に流れ、米のとぎ汁のような濁った or 黄緑の膿のような帯下となる。湿毒が陰部に停滞し、陰痒が見られる。湿毒が内蘊して津液を損傷するので、口苦咽乾、小便短赤、舌紅苔黄となる。 |
女子が結婚して、正常な性生活を営み、配偶者も健康で、3年以上経っても妊娠しないものを「不妊症」という。
不妊の原因は色々あるが、女子に原因がある場合と男子に原因がある場合とがある。女子に原因がある場合は、大体二種類あり、一つは先天的生理欠陥に属するもので、これは漢方薬で治療することは難しい。もう一つは後天的病理変化である。
現代的にいえば、
排卵障害 | 卵巣または垂体機能の失調によって女性ホルモンの分泌が減退し、卵巣発育不全、結果として無排卵となる。 |
輸卵管不通 | 炎症によって輸卵管の癒着をひき起こして不通になったもの、あるいは輸卵管が長すぎるなど。 |
受精卵の着床障害 | 子宮奇形発育、子宮粘膜下筋腫、子宮内膜結核などによる。 |
慢性病 | 甲状腺機能不全、結核、悪性貧血などによって、内分泌機能障害をひき起こしたもの。 |
漢方では、受胎の病機は腎気旺盛、精血充実しておれば、任脈通じ、衝脈は盛んになり、月経は順調で妊娠することができる。腎気が虚弱で、気血不足し、衝任が失調すれば、妊娠することができない。
一般に臨床では、大部分が月経は異常である。あるいは積聚*ちょう*かなどによって、気血虚弱になり、月経の不調をきたす。
本病の病因病理は次の四つに分類することができる。
腎虚型 |
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気滞血淤型 | 月経不定期、経期小腹墜脹痛、月経すっきり出ない、血塊混じる、経前乳房脹痛、急躁易怒、抑鬱悶々、脇肋脹痛、舌質暗紅 or 淤斑、苔薄白、微膩 |
痰湿内阻型 | 肥満、顔色白っぽい、頭暈頭重、動悸、息切れ、月経時々ある、量少 or 閉経、大便溏薄、1日2〜3回、全身無力、食欲不振、舌質胖嫩、歯印、苔膩、微黄 |
男性不妊型 | 腰痛腿軟、無力、性欲減退、遺精、早漏、精虫数少、活動低下 |