女子月経

婦人科全般にわたって、その病因、病理、病位、病性を四診で得られた特徴に従って総合的に判断、推理、分析することにする。
婦女の月経の正常異常は、健康のバロメーターである。故に月経の異常は直接、間接的に全体の健康に影響を与える。

病因病理

婦人科疾患の発生原因は、主に外感と内傷に分けられ、外感では寒、熱、湿、内傷では精神的因素、多産や房労などによるものが多い。種々の因素は、気血、臓腑、衝任の脈の正常な生理機能に影響を与えて、色々な婦人科の疾患を起こす。

病因
外感 寒邪が外襲すると血は寒によって凝まり、血の循環が緩慢になり、月経は遅れ、月経量は少なく、月経痛や閉経などの病となる。
熱によって火と化すと、血液妄行し、血の循環が速くなり、月経の周期は早まり、月経過多、逆経、崩漏、産後発熱などが起こる。
湿性は重濁で、経脈を阻滞し、気の流れが失調し、血行が阻まれて、月経不順、帯下などが起こる。
内傷 精神状態は、婦人科疾患の発生や発展に多大の影響を与える。精神情緒の反復刺激は、肝、心、脾の機能失調をひき起こし、いずれも衝任二脈の働きに影響し、月経不順、閉経、逆経などの病を起こす。
また多産や房労過多によって気血を傷耗し衝任二脈を損傷しても、月経痛、帯下病、流産、早産などの原因となる。

病理
気血 気血の失調は婦人科疾患で常見される発病因素である。月経、妊娠、分娩、授乳はいずれも血の作用によって行われ、皆血を消耗し易い。したがって常に血分不足になり、相対的に気の有余の気血失調状態をひき起こす。それ故、婦人科疾患では血虚が主である。
もともと血が本であるが、気は血の帥であり、血は気の指図によって支配されており、気は陽、血は陰、気は動、血は静、血の生成は気に頼っており、気の循環が血行を左右する。
血の昇降、寒熱、虚実はみな気に従っている。それ故、婦女の病はみな血が原因とはいっても、大部分は気病が血に及んだものである。つまり「血病は気による」ということになる。
臨床でよく見られる気血失調は、血虚火旺に属するものが多い。
臓腑 脾は精微の運化を主り、心肺に上輸して営血に化生し、全身を滋養している。そして余ったものは肝に貯蔵し、婦女にあっては衝任二脈に蓄え充溢させて、月経、妊娠、授乳に備えている。
衝脈、任脈の循行部位からみると、衝脈は「気街から起こって」、足の陽明経より出、足の少陽経と併行し、気血を涵養している。足の陽明は胃に属し、水谷の海であり、資性の源である。足の少陰は腎に属し、先天の本であり、精を蔵し子宮の機能と密接な関係をもっているので、衝脈に多大の影響を与える。任脈は小腹から出て、気血の脾、肝、腎の三陰経に合流し、それによって子宮を内養しており、「婦人の生養の本」となっている。
婦人科の疾患は衝任の脈の損傷がみられるが、治療に際しては多くは臓腑機能の調整が主である。
衝任 「衝は血海である」(衝脈は十二経脈の聚る処。血海は通常衝脈を指す。その脈は子宮から起こり、気血の作用を調節し、月経の来潮と密接に関係している)
「任は子宮を主る」(任脈は月経の来潮や妊娠の能力を主っている。任は姙に通ずる)

衝脈は血を化して月経の源泉となり、任脈は妊娠の重要な働きをなしている。
情志調和し、精気充実し、飲食正常で、陰生陽長、気血順和すれば衝任の脈は流暢で、病は発生しない。
外感や内傷によって衝任の二脈が機能の異常を起こすと、時間通りに満ち欠けができなくなり、子宮もその働きが充実せず、月経、帯下、妊娠、お産に病理的変化が起こってくる。


診断

婦人科でも勿論のこと、四診による症候の掌握によって判断、分析することが大切である。ここでは、寒、熱、虚、実の四つに分けて説明する。しかし、これら四つは互いに孤立しているものではなくて、相互に交ざり合い重なり合っている場合が多い。

寒型
実寒 小腹拘急冷痛、痛んで拒按、温めると痛み減じ、身体四肢冷、大便泄瀉、月経後期(月経の周期が大体一週間以上遅れてくるもの)、月経困難、経色暗黒、質粘、血塊が混じる、閉経、白帯量多、流産、不妊、顔色青白、舌淡紅、苔白厚。
寒邪壅盛して、陽気が抑え込まれたもの。
虚寒 小腹墜脹隠痛、喜按喜温、腰酸畏冷、口味なく食欲減、大便溏薄、小便清長、月経後期、月経量少、経色淡紅あるいは紫黒、質稀薄、月経痛あるいは閉経、白帯白、口唇色淡、舌淡紅、苔白潤。
陽気虚衰して、陰寒が内盛したもの。

熱型
実熱 煩躁口渇、発熱汗出、胃腹部痞満、疼痛拒按、大便乾燥、小便黄赤、月経先期(月経の周期が正常より大体一週間位早いもの)、月経量多あるいは急な崩漏、質粘、血塊が混じる、経色紫紅、逆経(月経期間中または月経前の吐血や衄血)、帯下黄色、質粘、顔紅目赤、舌紅、苔黄燥。
熱邪熾盛して、衝任が損傷したもの。
虚熱 頭暈目眩、潮熱あるいは内熱、盗汗、消痩無力、咽乾口燥、少寝多夢、月経先期、月経量少あるいはダラダラといつまでも続く、経色鮮紅、質清稀、血塊なし、逆経、帯下は血液が混じり、更年期障害、顔色潮紅、舌紅、苔少あるいは無苔。
火旺陰損によって、熱が衝任を乱す。

虚型
気虚 全身疲乏無力、ものうく、息切れ、精神不振、動悸多汗、少腹下墜、大便溏薄、月経いつまでも続く、崩漏、色淡、質稀、白帯多く稀薄、流産を起こし易い、子宮下垂、顔色白っぽい、舌唇淡紅、苔白潤。
脾腎気虚により、衝任が受損され、固摂できなくなったもの。
血虚 頭暈目眩、動悸、皮膚乾燥、消痩、手足麻木、大便乾燥、月経後期、経色淡紅、質稀、月経量次第に減少、甚しい時は閉経、月経後腹痛続き喜按、乳汁不足、顔色くすんだ黄色か淡白、舌唇淡紅、苔薄あるいは無苔。
営血虚損減少により血海が充満されず、衝任が滋養を失したもの。
陽虚 精神疲乏、身寒肢冷、自汗、下痢、小便清長、月経周期大幅遅延、月経量少、色淡、質薄、帯下清稀量多、不妊または流産、顔色灰白、舌質淡嫩、苔薄白。
陽虚生寒により、衝任を温煦することができなくなったもの。
陰虚 頭暈耳鳴、午後潮熱、口乾、盗汗、煩熱、身体痩弱、動悸多夢、腰膝酸軟、大便乾燥、月経周期大幅先期、月経量多く崩漏、あるいは量少で閉経、帯下血液混じる、顔頬轟熱、頬赤、舌質紅絳あるいは舌光無苔。
陰虚生熱により、衝任を滋養できなくなったもの。

実型
気鬱 精神抑鬱、頭暈目眩、胸腹脹痛、月経不定期、経色紫紅、月経困難、小腹脹して痛、経前乳脹、妊娠産後腹痛、乳汁不通、舌苔白薄あるいは微黄。
肝が疏泄を失して、気が鬱滞したもの。
血淤 胸腹刺痛、口乾しても水分は欲しくない、大便乾結、月経後期、経色紫黒、血塊が混じる、塊が下ると痛減、月経困難、小腹硬痛拒按、月経痛、閉経、顔色暗紫あるいは目のふちのくま、舌質紫あるいは淤点。
淤血の内阻により、血液の運行が不利となったもの。
痰湿 頭重くしめつけられるよう、身体困重、胃腹部脹満、食少、悪心、口淡(味がしない)粘膩、大便溏薄、月経遅延、量少色痰、閉経、白帯量多、つわり重い、あるいは不妊、顔目浮腫、舌苔白膩。
痰湿が壅滞して、気血の流れが失調したもの。

1.月経異常

月経とは毎月1回子宮からの出血の現象をいう。卵巣や子宮などの周期的変化が月経をもたらすものであり、これを月経周期といっている。
女子の臓腑経脈の生理機能が次第に発育成熟すると月経が始まる。初潮は一般に12歳〜18歳の間であり、大多数は12歳〜15歳である。月経の間隔(周期)は通常28日〜30日で、その出血期間は3日〜5日であり、出血の量は2日〜3日が最も多く、その総量は50〜100mlである。
排出された経血中には粘液、内膜組織、脱落した膣上皮などが混じっている。内膜組織には抗凝物質が含まれているので、経血は一般に凝固しない。正常なものは無味無臭である。妊娠するとこのような毎月1回の周期に変化が生じて、すぐ月経は止まってしまう。

漢方医学では、月経の来潮は腎気(命門より生ずる)や衝、任脈の作用によるものと考えられている。
腎は精を蔵し、人体の成長発育を主っている。女子が7歳前後になると、腎気は次第に旺盛になり、身体の著しい変化が起こり、歯も生え換わり、髪もフサフサとのびてくる。14歳前後になると、腎気はますます充盛し、「天癸<テンキ>」(月経)が始まる。これは性腺刺激ホルモンの分泌によるものである。
このようなとき生殖機能はようやく成熟し、衝脈、任脈もその作用を発揮しはじめる。任脈は気を通じ、衝脈は血を盛んにし、子宮に達し血海は満ち溢れて月経となる。49歳前後になると腎気も衝任二脈も次第に衰え、内分泌腺ホルモンの機能も次第に弱くなり、いわゆる「天癸竭」、月経は止まってしまう。
月経は主に腎気と衝任二脈によるものとはいっても、これらと五臓とはまた密接な関係をもっている。血の生成、運行循環は気の生化と調節に頼っており、気はまた血の営養に依存している。
五臓で、心は血を主り、肝は血を蔵し、脾は血を統べ、肺気も血の正常運行に参与している。五臓の機能が正常であれば、血液は通暢し、血海の満ち欠けも充分に行われ、月経も決まった時期に来潮する。
つまり漢方では、月経の来潮は、臓腑経絡気血の作用の如何にかかっている。月経時には、ある程度の軽い小腹及び腰、背の張りや痛み、頭重痛、乳房脹、全身倦怠、食欲減少、情緒不安などが現れるが、月経が終わると自然に消失する。

2.帯下

婦女の膣内には常に白色または淡黄色で無味無臭の薄く粘っこい分泌物がある。これを「帯下」または「白帯」といっている。これは膣壁の粘膜を潤し、一般に月経前後や排卵期や妊娠期には比較的多くなるが、ほかに不都合な症状がなければ生理的な帯下であり病ではない。
もし帯下が異常に多かったり、色がついていたり、濃い粘液であったり、水のように薄かったり、臭いがあったり、また掻痒や灼熱痛などの局部的刺激症状や、更に腰腿酸軟、小腹脹痛などを伴う病的状態の時は「帯下病」と見なす。帯下病は生殖器官によく見られる疾患であり、たとえば膣炎、子宮頚炎、子宮頚ガン、子宮筋腫などは、いずれもそれぞれ違った型の病理的帯下ということができる。
帯下病の原因は大きく分けて内因、外因の二種がある。
内因では脾気虚弱、腎気不足、肝経火鬱などによるものが多い。
外因は湿熱、湿毒によってひき起こされる。たとえば飲食の不節制、栄養分の多いものの過食などによって脾気を損傷したもの、房室で傷ついたり、手術の際に創傷し、任、帯二脈が影響を受けて固摂できなくなったもの、あるいは経行や産後に虚し、更に洗浄用具の不潔などの原因によって、湿毒の邪が侵入したものがある。

3.不妊症

女子が結婚して、正常な性生活を営み、配偶者も健康で、3年以上経っても妊娠しないものを「不妊症」という。
不妊の原因は色々あるが、女子に原因がある場合と男子に原因がある場合とがある。女子に原因がある場合は、大体二種類あり、一つは先天的生理欠陥に属するもので、これは漢方薬で治療することは難しい。もう一つは後天的病理変化である。
現代的にいえば、

排卵障害 卵巣または垂体機能の失調によって女性ホルモンの分泌が減退し、卵巣発育不全、結果として無排卵となる。
輸卵管不通 炎症によって輸卵管の癒着をひき起こして不通になったもの、あるいは輸卵管が長すぎるなど。
受精卵の着床障害 子宮奇形発育、子宮粘膜下筋腫、子宮内膜結核などによる。
慢性病 甲状腺機能不全、結核、悪性貧血などによって、内分泌機能障害をひき起こしたもの。

漢方では、受胎の病機は腎気旺盛、精血充実しておれば、任脈通じ、衝脈は盛んになり、月経は順調で妊娠することができる。腎気が虚弱で、気血不足し、衝任が失調すれば、妊娠することができない。
一般に臨床では、大部分が月経は異常である。あるいは積聚*ちょう*かなどによって、気血虚弱になり、月経の不調をきたす。

本病の病因病理は次の四つに分類することができる。

腎虚型
・腎陽虚
不妊、月経量少、月経不定期、血色黒ずむ、経期小腹冷痛、腰痛腿軟、手足不温、小便清長、畏寒喜温、舌質淡嫩、苔薄白
・腎陰虚
月経量多、だらだらと続く、月経先期、多い時は月2回、血色鮮紅、手足心熱、盗汗、腰酸腿軟、舌質微紅、苔薄白 or 微黄
・腎陰陽両虚
閉経 or 月経量少、月経時々ある、手足冷、小腹冷墜、時々潮熱耳鳴、舌質淡、苔薄白
気滞血淤型 月経不定期、経期小腹墜脹痛、月経すっきり出ない、血塊混じる、経前乳房脹痛、急躁易怒、抑鬱悶々、脇肋脹痛、舌質暗紅 or 淤斑、苔薄白、微膩
痰湿内阻型 肥満、顔色白っぽい、頭暈頭重、動悸、息切れ、月経時々ある、量少 or 閉経、大便溏薄、1日2〜3回、全身無力、食欲不振、舌質胖嫩、歯印、苔膩、微黄
男性不妊型 腰痛腿軟、無力、性欲減退、遺精、早漏、精虫数少、活動低下


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