問診とは、病人や病人の家族に色々と聞いて病状を把握し、その中から疾病を認識する上で必要欠くべかざる資料を得ることである。
常に疾病の発生、発展、転帰は患者の周囲の生活環境と密接に関係しており、発病の原因は複雑で発病の経過も千変万化である。
他覚的検査値によってもその疾病の症状を知ることができるが、これはあくまで局部的病変の事実のみが主であり、病人の全体像ならびに疾病の推移は知ることはできない。問診で得られた諸々の資料に、検査値をつき合わせて正確な診断を行わなければならない。
問診では病人と機械的に対話をかわすのではなく、今まで学んできた豊富な基礎理論を運用し、疾病を治すという目的を常に頭において詳細に問うことが必要である。更に、細心の注意をはらって真摯な態度で病人に接し、決してめずらしいものをあさるあるいは嘲笑のおもいで当たってはならない。
煩わしい病人の訴えを根気よく聞いて、主観で推測断定するという態度で目的からかけ離れた質問を行うのではなく、病人に不愉快の念を与えないように計画的に重点的に進めていかなければならない。
歴代医学家達は積み重ねられた経験から、次にあげる「十問」に集約総結している。その主な内容は、今までの生活習慣、既往症、発病原因、現在の症状及びその疾病の転変経過、治療用薬の状況、治療効果など多岐にわたっている。
問診中に得られた資料が多ければ多い程よく、それから得られた結論はより正確になる。
病歴を問診するにあたって、体質や嗜好は日常の生活習慣や精神状態、発病の原因を知る上で診断の助けとなる。たとえば、日常温かい飲食物を好み、冷たい飲食物は好まない場合、この人は陰に偏った体質であり、陰証を患うことが多いので、温熱薬を用い寒涼薬は用いてはならない。平生から冷たい飲食物を好み、温辛の飲食物を好まない場合、この人は陽に偏った体質であり、陽病を患うことが多いので、温熱薬の多量使用はよくなく寒涼薬を使用しなければならない。日常、冷たいもの温かいものどちらでもよい場合は、あまり陰、陽どちらにも偏っていない体質なので、このような人が熱病を患っても寒薬を用いて冷やし過ぎてもならず、また寒証を患っても熱し過ぎてはならない。冷やし過ぎると陽を損傷し、熱し過ぎると陰を損傷することになる。
その他、お茶や酒をよく飲む人は痰湿が生じやすいので、処方用薬としては滲湿のものを選んだ方がよい。
古より精神状況の変化を非常に重視している。精神面で過大の変動や長期間精神緊張が続いたりして精神的負担が重くなると、それが因素となって疾病が発生する。またこのような精神因素は、疾病の発展、予後に多大の影響を及ぼす。
精神因素は五臓に影響を与えるが、特に気の機能に変化を起こすことが一番大きい。その結果「鬱証」が生じ、気滞(鬱)、血淤、痰結、火逆などの種々の病証を起こすことになる。
問診では、まず疾病がいつ起こったか、そのときの精神状態はどうであったか、飲食は節制していたか、生活態度に無理はなかったか、中毒(薬物使用を含む)などなかったか等々をよく聞いて、発病原因を見つけ出し、外感か内傷かその他の原因かを見分けることが大切である。それによって治療法が各々異なってくる。
既往症があった場合、それが宿病として現在も続いているかどうかということと発病の発生とは大いに関係がある。
新病の発生と以前からかかえている固疾とは、関係をもっていることが多く、また固疾の再発が新病をひき起こすこともある。このような場合は、細心の注意をはらって新病発生の原因と既往症との関係をつかみ取らなければならない。多くの場合、既往症と新病発生とは深い関わりをもっているものである。
久しく困疾で苦しんでいる場合、一旦疾病が新たに発生すると、病勢が前よりひどくなり、虚証は益々落ちこみ、病邪は内陥し邪に負けてしまうので、必ず積極的に扶正の処置を講じる必要がある。
また、発病のとき症状出現の先後の順序は大変重要である。たとえば、先ず喘し後で脹が現れたものは、その病は肺にあるので、肺を治すことを主とし、治肺して喘を静めると、その後は脹は特別に治療しなくても自然におさまる。
反対に先ず脹して後から喘が起こった場合は、その病は脾にあるので、脾を治し、脾の運化を正常にすれば、脹が消失するばかりでなく喘もこれにつれて自然に止む。もしこれを反対に行うと、本末転倒のあやまった道に陥って、喘も脹も治りにくくなる。
主訴とは、病人が訴える苦痛の症状で、つまり現在症に相当する。症状を集めて総合的に分析して弁証することが、疾病を認識する上での最も大切な鍵である。
四診殊に問診で得られた資料によって、自覚症状の中から「偽りを捨て真実のみを採択する」という、ふるい落としをしなければならない。たとえば、寒がるけれど衣類を着たくないのは、假寒真熱であり、発熱しているけれどかえって厚着をしたがるのは、假熱真寒である。
また、口渇があっても温かい飲物を好むのは中焦の寒であり、口渇して冷たい飲物を好むのは裏熱である。
明・張景岳は《景岳全書》の中で、問診を重点的にまとめて「十問」を書いている。これを本に後世の医家が、一部削除したり補充したりして、今日の形になっている。
以下、問診における「十問」について順を追って述べる。