「脳」、「髄」、「骨」、「脈」、「胆」、「女子胞(子宮)」の六つをいい、その形態は腑に似ており、その作用は臓に似ている(精気を貯蔵する作用から)。臓のようで臓でなく、腑のようで腑でなく、一般の臓腑の作用と異なっているので、奇恒(普通と違った意味)の府と呼ばれる。
奇恒の府は、一般に深部に位置し、人体の重要な組成部分である。その特徴は他の臓腑(たとえば脾と胃、肺と大腸)のように対になっておらず、「濁」を貯蔵していない。その中で唯一胆と肝とは表裏をなしているが、胆汁はきれいで「濁」ではないので、胆は普通の腑と同時に奇恒の府の中に組み入れられている。奇恒の府は孤立的なものではなく、たとえば脳と腎、心、肝の作用は協調関係にある。
髄と骨の生長は、腎の精気によって充養されており、脈(血管)と心とは直接関係があり、子宮は腎気によって生長、発育をとげており、女子の月経や妊娠はまたみな血の供給によっているので、子宮と心、腎とは密接な関係がある。
髄は主に脊髄を指し、骨腔内の髄質も包括している。髄、骨は腎の蔵する精気から化生したものである。
《霊枢・海論》に「脳は髄の海」、《素問・脈要精微論》に「骨は髄の府」とある。これは、髄は上は脳髄となり、骨に蔵して骨髄となる。髄、骨、脳の盛衰は腎精の盛衰と関係があり、髄、骨、脳の病症は、腎の論治によらなければならない。腎は精を蔵する臓であり、精(先天的腎精と後天的水谷化生の精気)から髄を生ずる。また骨髄は血を化生するところであり、現代医学でも骨髄→幹細胞→赤血球という生成過程によって骨髄における造血作用が示されている。
髄は頭部内に集まって脳を形成し、「髄海」といわれる。《素問・脈要精微論》に「頭は精明の府なり」とある。
脳は人の中枢神経機能活動の中心であり、この働きは精の生成によって支配されている。脳の働きと心、肝、腎の臓腑とは関係があり、特に心、腎との関係が密接である。
脈すなわち血管は心と連なっており、血液循環の通り道である。脈と心臓及び他の臓腑とは、営養物の輸送並びに気血循環という機能で互いに連係している。
女子胞とは子宮のことであるが、実際の機能は内生殖器(子宮、卵巣、輸卵管などを含む)を指している。女子胞の生理機能は月経や妊娠であり、五臓の腎、肝、心、脾と密接に関わっている。
月経の変化は腎気の盛衰と直接関わっており、肝は血を蔵する臓、心は血液の運行を主り、脾は血液を統摂する。これらの働きはすべて腎によって決まり、腎精と腎気の充実は女子胞の生理機能を左右する。