陰陽失調では、陰と陽のどちらかが偏盛、偏衰となって相対的に平衡がくずれる。それによって疾病が発生することになる。この場合は、基本的には二種類に分けることができる。
一つは、偏盛の有余で実証という。実証の陰陽失調は、外来の熱邪が人体の陽と親和して陽の有余つまり(図A−1−左)のように相対的に陰にくらべて陽が多くなり水平線の上に突出した状態で、熱証をあらわす。また外来の寒邪が人体の陰と親和して(図A−1−右)のように相対的に陽にくらべて陰が多くなり水平線の上に突出したもので、寒証をあらわす。
もう一つは、不足によって発生する虚証の陰陽失調も、また寒証あるいは熱証をあらわすが、しかしこの発生の機理は実証の場合とは相違している。虚証の寒熱は、陰あるいは陽のどちらか一方が不足することによって別の一方が相対的に突出し、水平線より下の方にある状態である(図A−2)。
《素問・調経論》の「陰虚内熱を生ず、陽虚外(内)寒を生ず」とは、すなわちこの種の寒熱を指している。
実証の場合(図A−3)
治療原則としては、「寒は之を熱し、熱は之を寒す」である。実証の治療では、水平線の上に突出した有余の寒あるいは熱の病邪を直接折って除去してやれば、寒証あるいは熱証は自然に取り除かれる。実証の寒熱は外感病に多く見られ、攻法を用いる。
虚証の場合(図A−4)
虚証の寒熱は、陰あるいは陽のどちらか一方が不足することによって、陰あるいは陽が相対的に突出しかつ水平線より下にある場合で、それによって寒証あるいは熱証が出現するものである。その治療原則は実証の場合と全く異なっており、王冰が説いている「壮水の主、以て陽光を制す。益火の源、以て陰翳を消す」である。簡単にいえば、不足する一方を補足して陰陽のバランスを平衡に保てば、寒熱は自然に除かれるということである。虚証の寒熱は内傷病に多く見られ、治療原則は補法である。