八綱とは、疾病の複雑多岐にわたる症状を、陰、陽、虚、実、寒、熱、裏、表の八つに分類分析し、疾病の証を決める重要な方法である。その中で陰陽の両綱は、他の六綱(虚、実、寒、熱、裏、表)を総括している。
しかしこれら六綱は、複雑に錯綜して現われるので、単純劃一的に陰陽二大類に区別することはできない。その中でも臨床上出現する症状はみな、虚、実、寒、熱、の四綱に分けることが最も重要である。
陽盛──実─熱─表 | 陰盛──実─寒─裏 |
陽虚──虚─寒─表(裏) | 陰虚──虚─熱─裏 |
《素問・調経論》に「陽虚すれば外寒し、陰虚すれば内熱す。陽盛んなれば外熱し、陰盛んなれば内寒す」とある。
たとえば、次のように考えたらよい。
陽盛 | ・・・太陽の光熱が旺んになる | ・・・熱 |
陽虚 | ・・・太陽の光熱が衰える | ・・・寒 |
陰盛 | ・・・水が溢れる | ・・・寒 |
陰虚 | ・・・水が不足し乾燥する | ・・・熱 |
虚証
虚証は、生まれつきの虚弱体質、または久病や誤治によって生理機能が衰退し、あるいは出血、失精、大汗、外邪の侵襲により正気が損傷を受けたりして正気の不足、正気の虚になったものである。その中には、気虚、陽虚、血虚、陰虚の区別がある。気虚と陽虚は陽気不足の部類に属し、気虚は陽の中に含まれ、陽虚では寒象が出現する。血虚は、陰虚と同類で陰の中に含まれる。気虚、血虚では必ずしも寒象はあらわれない。
血虚では気虚を伴うこともあり(気血両虚)、陰虚と同時に出現することもある(陰血虚損)。気虚と陰虚が同時に現われることもある(気陰両虚)。
実証
実証は、平素より身体壮健、生理機能も旺盛で、外邪が侵襲しても正気が奮い立って激しく抵抗し、また人体内部に痰飲、水湿、淤血、虫積、食滞などの病邪が停滞したものである。つまり、邪気の有余と正気の強壮ということができる。
寒証
人体が陰邪の侵襲を受けると陰が強くなり、陰陽のバランスから考えると陽気は必ず不足し温める力が衰える。陰が盛ん(実)か陽の不足(虚)で寒証は起こる。
熱証
人体が陰陽の侵襲を受けると陽が勝って熱となり、また熱邪が津液を消耗して陰液の不足を起こして陰虚となり、熱証が現われる。熱証には、実熱証と虚熱証がある。
表裏は、疾病の部位の浅深及びその伝変の方向という二つのことを知る上で重要である。一般的に、病が表にあるものは病勢は浅く軽く治療も容易である。病が裏にあるものは病勢は深く重く治療も比較的困難である。それとともに表裏は病勢の発展の趨勢を見る上で大事であり、預後を判断するめやすともなる。
表→裏・・・浅→深・・・外→裏・・・軽→重・・・病情悪化の方向
裏→表・・・深→浅・・・裏→外・・・重→軽・・・病情治癒の方向
表証
病位が浅く、病の初期にみられる。たとえば、風邪を引いたときの発熱、悪寒(悪風)、頭痛、鼻塞、鼻水、自汗あるいは無汗、身痛などの症状はみな表証である。
衛気が外邪すなわち風邪を阻んで皮膚に鬱するので悪感(悪風)し、衛気と外邪が争って発熱が起こる。頭痛や身痛は気が鬱し気血の流れが悪くなったためである。このとき邪はまだ裏には入っておらず、肺に影響を与えて肺気の通調が不利になって鼻塞、咳などが起こる。寒邪が皮膚に束縛されると無汗、衛気の固摂作用が衰えると自汗になる。
裏証
裏証とは、人体内部に発生した病変のことで二通りある。一つは、外邪が内伝して表から裏(内部)に入ったもの、もう一つは、内傷の七情、労倦、飲食によって臓腑本体や気血、津液に病変が生じたものである。内傷雑病は殆んどが裏証である。
半表半裏
半表半裏証とは、病邪が完全に表にあるのでもなく、また完全に裏に入ったわけでもなく、表と裏の中間にあるものを指す。この場合、表証の寒熱往来(寒けと熱が交互にくる症状)、口苦咽乾、裏証の胸脇苦満、心煩(内熱によって起こるいらいら、不安)喜嘔、めまい、苔白舌辺紅という表裏互見の証候がみられる。傷寒病でいう少陽証である。
※少陽証については後述する。