法實作 翁面で遊ぶ唐子の図 角型饅頭根付
上田令吉著「根附の研究」でも「東京都一の名工なり」と紹介されている根付師の作です。
法實(實の字は本来旧字です)については諸説ありますが、前述の「根附の研究」では「幕府の御家人(茶坊主とせるものあり)なりしかば将軍家お抱根付師の観有(中略)東京小石川原町鶏声(原著では旧字)ヶ窪に住せしを以って明鶏斎と号せり、明治五年八月十三日没す(中略)彫銘、法實或いは法實花押」とあります。
山田法實、あるいは明鶏斎法實と呼ばれるのはそれゆえ、というわけです。
御家人でありながら根付師、というのが面白いですね。尾崎紅葉の親にして根付師でありながら、さらに幇間という尾崎谷斎も、法實と同じく江戸の人間でした。幕末にこういう珍人物が多いのは何故なのでしょうか?
弟子の法一にも似た図柄の物があり、ポピュラーな題材だったのでしょう。
裏面に太鼓が描かれているので、祭り、や祭りに伴う「能」を題材にしているのだと考えます。
可愛い童子と翁、という取り合わせが洒落ています。
法實といえば唐子や能を題材にした物が多く、この根付もまさに法実の得意な題材といえると思います。
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